考えているのに、前に進まない

そんなふうに感じられることありませんか?

津田 慶

12/20/20251 分読む

ノートを開いて、書いて、考えて。
それなりに時間もかけているし、向き合っていないわけでもない。

それでも、
「ちゃんと考えているはずなのに、前に進んでいる感じがしない」
そんな感覚になることはありませんか?

答えが出ていないわけではない。
ただ、どこか同じところを行き来しているような、
足踏みしているような感覚が残る。

こうした状態は、考える力が足りないから起きるわけではありません。
むしろ、真剣に考えている人ほど、よく経験します。

ひとりで考えているとき、
無意識のうちに、同じ前提、同じ言葉、同じ視点を使い続けているのです。

「これは仕事につながらないから外そう」
「こんなことを書いても意味がないかもしれない」
「生きがいと言うには、大げさすぎる気がする」

そうした小さな判断が積み重なって、
思考はいつの間にか、決まった範囲の中を回り始めます。

IKIGAIヴェン図を描いてみたとき、
途中で手が止まったり、
中心がどうしても埋まらなかったりするのも、同じ感覚です。

「何を書けば正解なのか」
「これで合っているのか」

そう考え始めた瞬間、
考える対象は、自分の感覚から少しずつ離れていきます。

ひとりで考える時間は大切です。
でも、ひとりで考え続けることが、
必ずしも前進につながるとは限りません。

ここで、対話という選択肢が出てきます。

コーチングという言葉から、
答えを教えてもらう場、
アドバイスをもらう場を想像する方もいるかもしれません。

でも、私が考えるコーチングは、
「前に進ませるための答え」を足すことではありません。

同じノートを、
少し違う角度から一緒に眺めること。
それが、対話のいちばん大切な役割だと考えています。

誰かに話すことで、
自分では当たり前だと思っていた言葉が、
思った以上に大きな意味を持っていたことに気づく。

逆に、
「たいしたことではない」と思っていた経験が、
何度も話の中に出てくることに気づく。

対話は、
何かを足すというよりも、
すでにあるものの配置を、少しだけ変える作業です。

私のコーチングスタイルは、
「こうしたほうがいいですよ」という助言を、あまりしません。

代わりに、
なぜその言葉を選んだのか。
なぜ、そこだけ少し言葉に詰まったのか。

そうした小さな違和感を、丁寧に扱います。

それは、
考えを整理するというよりも、
思考が動く余地を、少し広げる感覚です。

もし今、
考えているのに、前に進まない感じがしているなら、
それは行き止まりではありません。

考えが足りないのではなく、
視点が動かなくなっている状態なのかもしれません。

あなたの中にあるものは、
もう十分に並んでいる。
ただ、まだ別の角度から見られていないだけかもしれないのです。

ノートを閉じる必要はありません。
答えを急いで決める必要もありません。

ひとりで考える時間を大切にしながら、
必要なときだけ、対話という選択肢を思い出してもらえたら。

それで十分だと、私は思っています。