「評価される」と感じた瞬間、人は本音を隠し始めます。

私たちは、「評価される」と感じた瞬間に、自分や他人を守ろうとしますよね。私も例外ではありません。

津田慶

7/12/20261 分読む

「評価される」と感じた瞬間、人は本音を隠し始めます。

これは、人材育成の現場でも、人的資本経営でも共通していることではないでしょうか。

私は今、とある企業様と「グローバルな協働力」を高めるプログラムを開発しています。そして、参加者の皆さんに事前・事後アンケートや振り返りにご協力いただき、学びや変化を記録しています。

そのデータを眺めながら、ふと気づいたことがありました。

人的資本経営では、「数値化できない価値をどう評価するか」が話題になります。

でも私は、少し違う見方をしています。

価値が数値化できないのではなく、数値化するときの私たちのマインドセットの問題なのではないでしょうか。集めたデータを「評価」として扱うのか、「記録」として扱うのか。問題は、そこなのかもしれません。


私たちは、「評価される」と感じた瞬間に、自分や他人を守ろうとしますよね。私も例外ではありません。

「できるようになりましたか?」と聞かれると、
「はい。」と答えたくなる。

「まだできていません。」とは、なかなか言えません。

その瞬間から、収集するデータは少しずつ本来の姿から離れ、本来の価値を失い始めます。

だから私は、人材育成でも人的資本経営でも、本当に必要なのは新しい評価指標ではなく、「今は評価するタイミングではない。これは私たちの成長の記録なんだ。」と、お互いが思える環境や、マインドセットの共有なのではないかと思っています。

私が協働の現場でこれまで意識してきたSBIIという思考の型も、この考え方に基づいています。

SBIIは、フィードバックのためだけの型ではありません。
自分自身の振り返りにも、上司への報告にも、同僚との対話にも、1on1にも、そして日々の報連相にも使える、意外とシンプルな思考の型です。

Situation(状況):何が起きたのか。
Behavior(行動):自分や相手は何をしたのか。
Impact(影響):どんな結果や影響があったのか。
Intention(意図):なぜそうしたのか。次はどうしたいのか。

なるべくこの枠組みを意識しながら思考を整理します。

ここで大切なのは、最初から「良い」「悪い」を決めないことです。そして、私がSBIIで特に意識しているのは、最後の「Intention(意図)」です。

私たちは状況や行動は覚えています。でも、「なぜそうしたのか」は、意外と聞かれません。だからこそ、人を誤解することがあります。

いっしょにひとつやってみましょう。

高速道路を走っていたら、むちゃくちゃなスピードで黒塗りのセダンが追い越していきました。

さあ、あなたはこんな状況に出くわしたら、どんな思考を巡らせますか?

「危険じゃないか、何やってんだアイツ」と思う方が多いはず。私もたいていそういうリアクションをとります。

でも、その時点で分かっているのは「状況」と「行動」だけです。
実はまだ何も分かっていないのかもしれません。

そして一番大切な「意図」も、まだ分かっていません。

「実は覆面パトカーで、緊急要請を受けたのかも」
「ご家族が危篤状態で、病院へ急いでいるのかも」

そういった、状況や行動だけでは見えてこない事情と意図があるのかもしれません。だから私はなるべく、追い越していった運転手の評価を急がないように心がけています。

私たちは、なぜかすぐに自分や他人を評価し、判断したくなります。そして、調査結果や評価指標のようなコメントや「数字」を目の前にすると、その傾向はさらに強くなります。

でも、思い出してください。

昨日上手くできなかったことが、来週にはできるようになっているかもしれません。逆に、今日うまくいったことが、来週もうまくいくとも限りません。

だから、本当に見るべきなのは「点」ではなく「線」。一つひとつの記録を積み重ね、その変化を見続けることなのだと思います。

評価は、その変化を十分に見届けてから。

人材育成、そして人的資本経営の場で本当に必要なのは、「評価」を急ぐことなく、「成長の記録」を積み重ねることなのかもしれません。

私は、そのマインドセットと、SBIIのような共通言語や作法こそが、この考え方を組織に根づかせる土台になるのではないかと思っています。

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